本山蛇塚煎茶
本山蛇塚煎茶
旨味=美味しいではありません
現在の日本茶の主流は旨味成分を多く含むお茶です。旨味成分の本体はテアニンと呼ばれるアミノ酸ですが、旨味=美味しいではありません。旨味とは、出汁の素のようなのグルタミン酸ナトリウムに代表される味を指します。
茶葉に含まれるアミノ酸量を増やすためには窒素肥料を施肥する必要があります。窒素肥料が与えられた茶園ではお茶の木は勢い良く成長しますが、反面、カテキンを始めとするポリフェノール・ミネラルの量が少なくなります。
また、テアニンを多く含むお茶は味の深み(コク・余韻)が弱くなるため、お茶の味としてはあっさりとした味になります。
コクの強いお茶がHOJOの日本茶の特徴
HOJOではお茶のコクを重視したお茶選びをしており、テアニンではなく、カテキンとミネラルが豊富に含まれるお茶を選んでおります。ミネラルが多く含まれるお茶とは、自然栽培など無肥料や限定的な肥料により作られたお茶です。
お茶を飲んだときに、喉に残る甘い後味をお楽しみください。
本山蛇塚玉露は、徳川家御用達の高級煎茶の産地として知られる本山の奥地標高約800mに位置する高所で作られたとてもお茶です。
煎茶では珍しい高山の茶園に加え、萎凋工程を取り入れることにより、フローラルな香りと強い喉越しを併せ持つ、一度飲んだら忘れられないお茶に仕上がっております。
商品詳細
よく年配の方から昔のお茶は今より美味しかったという話を聞きます。
若い頃の記憶を美化しているだけかと思いがちですが、このような話はお茶の産地へ行くと、複数のお年寄りの方から聞きます。
昔と今と何が違うのでしょうか?
まず、蛇塚の煎茶はとても驚くべき手法により作られます。 茶葉は通常の煎茶よりも気持ち大きくなるまで成長させ、それまで摘み取られません。
やや大きめに生育することで、意図的に茶葉内のポリフェノール量を増やします。 この考え方は烏龍茶の茶摘みと同じです。
ある意味、あまり若すぎる状態で摘み取られた茶葉は有機化合物量の不足から、フレーバーが弱くなりがちです。
意図的にポリフェノール量を高めてから収穫された茶葉は、緑茶なのに萎凋を行います。 萎凋と言えば、烏龍茶、白茶、紅茶作りの代名詞のような工程です。
24時間風邪通しの良い日陰で萎れさせることで、茶葉自身の持つ酵素による熟成を進め、花のような甘い香りを一気に引き出します。
この工程も凄いのですが、更に、蛇塚のお茶の場合、標高が極めて高いために、一番茶が出来る時期自体が5月半ばと遅く、それ故に茶摘みは1年に一回だけ、しかも茶摘みは全て「手摘み」で行われます。
以上の特徴と昔のお茶が美味しいのとどういう関係にあるのでしょうか?
今では何処の茶園に行っても、ごく一般的に見られるのがトロッコです。
茶園と山の麓を結んでおります。また、茶園には連絡路が張り巡らされており、山奥深くにある茶園でも車で容易に到達できます。
これらのインフラにより、収穫された茶葉は即工場へと搬送され、スケジュールに基づいて加工が行われます。このため、茶葉は収穫された直後の新鮮な状態のまま、即、加工場へと送り込まれます。
昔はどうだったのでしょう?
昔は山の上の茶園で収穫された茶葉は、即下界へと搬送する手段もなく、茶園のムシロの上に暫く広げられ、一日放置されるのも一般的だったと推察されます。
緩やかな流れにより加工が行われていたため、意図して萎凋をしていた訳ではないのですが、結果的に萎凋が行われていたと推察されます。
高山の気候は昼の日差しが強く、夜の気温が極めて低いのが特徴です。 光合成により昼間に蓄えられた有機化合物は、本来夜に消費されるはずなのですが、急激な寒さ故に消費されません。このように夜の低温は茶葉の成長を遅らせるため、有機成分が茶葉内に蓄積します。
この茶葉を更に萎超する事では日本茶に欠けている香りを高め、味だけでなく、香りと味のバランスのとれた、傑作というべきお茶になりました。
歴史と文化
安倍川は日本でも有数の急流・清流であり、その流域には、急斜地が多く点在します。ここでは霧が多く発生し、平地と比較して日照時間も少ないため、上質なお茶を作る条件が揃っています。
「茶説集成」によれば、鎌倉時代、自生茶が安倍川流域に生育していたという記録があり、元々、この安倍川流域がお茶の生育に適した土地であったと思われます。
本山茶の起源は、「国師の駿河足窪(現 足久保)の茶植え(東福寺誌)」とあるように、鎌倉時代の聖一国師(安倍川支流の藁科川にある栃沢出身の禅僧)が、寛元二年( 1244年)、上野国の長楽寺を訪ねた後、故郷の栃沢に帰り、その際、山を隔てた足窪村に宋より持ち帰ったお茶の種を播いたとこの地では伝えられています。
日本茶の祖と呼ばれる栄西が「喫茶養生記」を書き上げたのが 1211年のことですから、まさに日本茶の黎明と時同じくして、本山茶が始まったと言えます。
これ以降、様々な書物に茶の産地として、駿河国の記述が出てきます。そして、本山茶の地位を高めたのが、かの徳川家康です。
家康は茶会に用いるお茶の品質保持のため、安倍川上流の大日峠に茶蔵を建設し、多数の茶壺を保存したそうです。以後、本山茶を江戸城への御用茶として献上したという記録が残っています。
本山茶の名付け親は、藁科川の清沢村(現在の清沢相俣)出身の「築地光太郎」。明治時代にお茶の輸出が盛んになり、日本各地でお茶が生産される中、自分の故郷の伝統あるお茶を他の産地と区別するために「本山茶(本家本元の茶)」と命名しました。
現在、静岡県はお茶の生産量日本一をほこり、安倍川のほとりの静岡市茶町は、お茶の集積場として、日本全国のお茶が集まります。そのお膝元で生産される本山茶は、絶えず厳しい目で選別され、上質な茶を提供しています。
本山の中でも特に標高が高く良質の原料茶葉が生産される蛇塚には、合計すると10件ほどの民家があります。
但し、煎茶を作っているのは数家族であり、更に、お茶作りは各戸単位で行われるため、本商品は中村氏のみが生み出すことの出来るお茶です。
生産地域
静岡県静岡市から南アルプスを正面に、梅ヶ島に向かって北上すると安倍川や藁科川に出会います。 これらの地域から、南アルプスの裾のまでの山間の地域を包括して本山と称します。
つまり、一般に本山茶といえば、静岡県の北部、南アルプスの裾野付近で採れた山間のお茶を指します。 この中でも蛇塚は更に奥地の山間に位置し、静岡市の中心地からは車でも1時間以上要します。
蛇塚呼ばれる地域はその名の通り、高地に位置しており、その標高は約800mと、日本におけるお茶の生育限界に限り無く近い高度に茶園があります。
標高が高いために、早い時期に冬が訪れ、春が来るのも他の地域よりも1ヶ月ほど遅く、実質冬の期間が他地域よりも2ヶ月ほど長いのが特徴です。
日本におけるお茶市場はやや極端な面があり、出荷時期が早いほど相対的に高い値段が付く傾向にあります。
つまり、お茶の磁器が始まる4月の中旬頃に収穫されたお茶は有無をいわさず高級茶として取引されます。
但し、重要な点としては、標高が低い茶園ほど春が来るのが早いということです。 春の到来が早いということは、つまり冬の期間が短いことを意味しており、お茶の品質としてはあまり良くありません。
短い冬の期間がどの様な点に反映するかというと、飲んだときに喉の奥にで感じられる後味の強度が、高山にて遅い時期に収穫された一番茶と、低地で早い時期に収穫された一番茶とでは大きく異なります。
蛇塚のお茶の場合、茶園が極端に高地に位置しているために、一番茶の収穫が始まるのは5月の中旬と、一般的な静岡茶よりも収穫時期が1ヶ月も遅く、市場に出した場合、品質とは裏腹に極めて安い値段が付くことを避けられません。
このジレンマを解消すべく、生産者の中村氏はお茶の品質を独自の方法(多項目記載)高め、直接お茶会社へ販売することで、蛇塚煎茶の極めてマニアックな品質を世に伝えているのです。
栽培品種と摘採
本山蛇塚煎茶は「藪北」という品種を使用して作られます。5月の上旬に一番茶のみが収穫され、2番茶は収穫しません。
茶葉は朝露を避けるために、日が昇った後に摘み取られます。
朝露が混入した場合、蒸し工程中に朝露の部分だけが熱水になることから、茶葉の細胞組織が過度に破壊され、良質の煎茶を作ることが出来ません。
従って、上質の煎茶は晴れた日に収穫された茶葉から作られます。 本山蛇塚煎茶の場合、通常の煎茶の収穫基準と比べると、葉がやや大きくなるまで意図的に待ってから茶摘みが行われます。
これは後に控える本山蛇塚煎茶特有の萎凋工程のためであり、茶葉が成長することで、より多くのポリフェノールを作りだし、それが萎凋により花のようなフレーバーを生み出すことを目的としております。
加工
本山蛇塚煎茶の加工方法については以下の通りです。
1-原料の入荷
基本的に個人茶園ですゆえ、奥様を中心に近所の知り合いの手を借りることで茶摘みが行われます。収穫された茶葉は自宅兼工場へと搬送され、中村氏の手により作業が進められます。
2-萎凋
茶葉は竹製の笊に広げられ、風邪通しが良く湿度のない例暗所にて24時間放置されます。これが蛇塚のお茶の特徴でもある、萎凋工程です。萎超工程を行うことで、茶葉は徐々に酵素反応を促進し、果物が追熟するのと同じように、甘い香りを作り出します。
3-蒸し
新鮮な香りを維持するために、20-30秒のごく短時間で蒸しは完了です。
高温の飽和蒸気を短時間で万遍なく与える事で、茶葉はさらっとした感じに仕上がり、結露水により濡れることがありません。これが美味しいお茶を作る上での重要なポイントです。
4-冷却
蒸すことで熱を持った茶葉を、冷却し同時に茶葉に含まれる水分を飛ばします。敏速に湿熱を除去することで、二次的な熱劣化を防ぎます。
5-粗揉(そじゅう)
熱風中で茶葉を攪拌することで能率よく乾燥し、揉みながら茶葉に形をつけていきます。
6-揉捻(じゅうねん)
唯一熱を用いない工程です。茶葉に荷重を加えながら円形運動をし、茶葉の水分を均一に分散させます。茶葉を揉むことで摩擦熱が発生するため、定期的に茶葉をもみほぐすことで、熱を発散させます。
7-中揉(ちゅうじゅう)
回転式の乾燥機を用い、茶葉を軽く揉みながら乾燥を進め、水分を均一にしつつ、茶葉をよりながら細かくしていきます。
8-精揉(せいじゅう)
直線的な前後の動きと円を描く様な横の動きにより煎茶特有の針のような、「より」を作り上げます。一本一本が黒光りし、硬く良くしまっていることが重要です。
9-乾燥
精揉を終えた茶葉はまだ水分を含んでいるため、乾燥することで水分を5%程度まで落とします。こうして乾燥が終わった茶を「荒茶」と呼びます。
荒茶は仕上げの「火入れ」が行われていないため、仕上げ茶と比べると生の葉の香りと苦みが強いのが特徴です。
10-火入れ
本山蛇塚煎茶の場合、新鮮な花のような香りを大切にするため、HOJOではあえて弱火にて加工しております。このため、最近の煎茶に多い、火香が殆ど無く、お茶の素材が作り出す新鮮な香りを堪能することが出来ます。
火入れの目的は以下の2つです。
- 荒茶を乾燥して貯蔵に耐えられるような低水分にする。
- 加熱することで茶の香りを高め、香味を向上させる。
各製茶会社は通常荒茶を原料茶葉として購入し、この荒茶を各社独自の方法で火を入れることで、オリジナルの香り・味に仕上げます。
こうして出来上がったオリジナルの火入れ茶を複数ブレンドすることにより、製茶会社オリジナルの「仕上げ茶」が完成するわけです。
HOJOの本山茶・本山蛇塚煎茶の場合、茶園独自の伝統的な味香りを重視するため、ブレンドは一切行っておりません。