雲南功夫紅茶
雲南功夫紅茶
突出して質が良い雲南省のお茶でダージリンティのような華やかな紅茶を作る
雲南省は、ダージリンと同じく標高が高いため、一般の茶園産のお茶であればダージリンのお茶の質と非常に似ております。
ただし、高級なプーアル生茶の原料になるような、放置された自然栽培茶園の老木から収穫された茶葉となると、品質が恐ろしく高く、ダージリンの人々には申し訳ないですが、上質な雲南省の古樹茶は格が違います。
ただ、雲南省における紅茶は前述したとおり、短い萎凋を標準としており、発酵が深いという点で、アッサムティに近い性質の紅茶と言えます。
この為、香りが穏やかであると同時に、ミルクとの相性が非常に良いお茶です。一方、私は長年、雲南省の極上の原料を用い、ダージリン紅茶のような華やかな紅茶を作ってみたいと思っておりました。
雲南功夫紅茶は萎凋をするために、1芯2葉〜3葉のより成熟した茶葉を用いて作りました。
何故功夫紅茶と呼ばれるか
功夫は日本語だと「工夫」となります。近年中国茶業界では功夫(工夫)の言葉が乱用されております。
ただ、本来、功夫と言う言葉は潮州の鳳凰単叢烏龍茶やその影響を受けている武夷烏龍を指す言葉であり、これらの烏龍茶の作り方の影響を受けていることが前提となります。
これらのお茶の特徴としては、萎凋の応用により茶葉を半発酵にすることで、フルーツや花の香りを引き出している点です。また、最後にお茶を低温焙煎することで香りを高めている点も重要です。
鳳凰単叢烏龍茶の製法の影響を強く受けて作られるようになったお茶の代表格は正山小種です。また、その製法を模倣して作られるようになったキームン紅茶、更にはキームン紅茶を模倣しているダージリンティも功夫紅茶の一つと言えます。
反面、一般的な雲南紅茶(滇紅)については萎凋時間が短く、半発酵工程を伴わないため、私的には「功夫紅茶」と呼ぶのは不適切と考えております。
ただ現実には、前述したとおり、功夫という響きが良いことから、あらゆる紅茶に対して乱用されているのが現実です。
萎凋の方法を工夫することで豊かな香りの紅茶を生産
この計画を実行する為には、萎凋を重点的に行い半発酵による花のような香りを高めることがポイントになります。
開発にあたっては、萎凋の方法を色々工夫しました。雲南省は設備が無いため、最初は竹のザルに載せて室内に広げておく萎凋方法も検討したのですが、あまり結果が好ましくなかったため、生産者の同意を得て萎凋層をデザインし、ダージリンと同じように空気を送ることで効率的に萎凋を行えるようにしました。
萎凋を長く行った結果、ダージリンオータムナルのような華やかな香りのお茶が出来ました。茶葉を見ると、萎凋がしっかりと出来ているためにより赤色系の色をしております。
ただし、使用しているお茶は、極めて質の高い春の一番茶ゆえ、コクの深さ、後味の濃さ、また香りに極めて奥行きがあるという点では、ダージリンオータムナルとは別次元のお茶になったと思います。
今後、更に、萎凋の方法を見直し、より個性的なお茶になるように開発を継続したいと思っておりますが、今年のお茶はこれはこれで非常に上手に作る事が出来たと感じており、私的には結果に満足しております。
雲南紅茶の殆どは鳳慶県の管理茶園産
雲南紅茶は別名「滇紅」(てんこう)と呼ばれます。
滇は雲南省を指す言葉、紅は紅茶を指しております。つまり、滇紅は雲南省産の紅茶を指す言葉です。雲南紅茶(滇紅)の殆どは臨滄市の鳳慶県と呼ばれる地域で作られております。
お土産で雲南紅茶や滇紅と書かれた紅茶を貰った場合、普通に中国茶専門店で販売されている雲南省産の紅茶を購入した場合、まずその殆どが鳳慶産と考えても遜色ないと思います。
鳳慶県は漢民族が非常に多い地域であり、少数民族が大多数である他地域とは逆の人口比です。雲南省では、基本、老木ならなるような歴史の長い茶園は少数民族に帰属します。
逆に、漢民族が所有する茶園の多くは、新規に開発された茶園が中心となります。鳳慶における紅茶用の茶園は、日本や台湾、インドやスリランカの茶園のようなカラム状の慣行栽培スタイルであり、お茶の木の樹齢はそう高くありません。
標高は1500-1600mが中心ですが、他の紅茶産地と比べると際だって標高が高いことから、品質は中の上といった感じです。
灌木地帯に混じってお茶の木が生えております。
プーアル生茶に加工されるような極上の原料から作る紅茶
高い品質の原料茶葉を求めた結果、よく管理された鳳慶の茶園ではなく、鎮康県にある標高2100-2200mの自然栽培茶園を選びました。
茶園は、少数民族のイー族が所有しており、どれも100歳以上の老木からなっており、半野生化しておりました。お茶の品質は標高が高いほど、樹齢が高いほど、また、肥料を与えないほど高くなります。
これら3つの要素に共通するのは、成長がゆっくりである点です。ゆっくりと成長したお茶の葉はポリフェノールとミネラルを豊富に含み、後味が濃く、長い余韻と、喉に染み入るようなコクが感じられます。
これら質の高い茶葉は通常プーアル生茶へと加工されます。雲南省では質の高い原料はプーアル生茶に加工した方が付加価値がつき、高く売れるためです。
ただ、私達は直接農家から仕入れる事で、仕入れ価格を低く抑えました。
虫の攻撃を受けると香りを生み出すお茶の不思議!
野生化した茶園の茶葉は、様々な植物や昆虫と共に存在しているため、ウンカなどの虫が茶葉の汁を吸うことを避けられません。
ただし、虫の攻撃を受けた茶葉は虫に抵抗しようと、テルペンという防御物質を作り出します。不思議な事に、このような茶葉は発酵を経ることで蜜のような甘い香りを放つ物質へと変化します。